2025.09.02

医療と福祉の橋渡し役に。看護師の私が、障害者グループホームの新規事業にチャレンジした理由。

LITALICOレジデンス 看護師インタビュー

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新卒から集中治療室、そして在宅医療の世界へ。看護師としてキャリアを築いてきた吉田さんが、なぜ福祉業界である「LITALICOレジデンス」での新規事業立ち上げへの参画を決意したのでしょうか。自身の経験を活かし、ゼロから「唯一無二のグループホーム」を創り上げようとする吉田さんの想いに迫りました。

看護師として歩んだ、医療と訪問看護の世界

プロフィール
吉田さん
看護師として、病院での集中治療室を経て訪問看護事業での現場経験、ならびに管理者としての経験を積む。現在は2025年に開所したLITALICOレジデンス(重度障害者向けグループホーム)事業において看護師として従事。立ち上げから看護師業務だけでなく育成・研修対応、支援の現場対応まで幅広い業務に携わる。


── まず、看護師を目指されたきっかけと、これまでのご経歴を教えてください。

母と祖母が看護師だった影響もあり、人の役に立てる職業に魅力を感じました。特に様々な領域で勤務している母を見て「資格一つで、いろんな場所で働けるって面白いな」と感じたのが始まりです。新卒で総合病院に就職し、集中治療室で数年間勤務しました。そこで生命維持に関わる知識や技術を総合的に学べたと感じています。

その後、命が助かった先にある生活を支えることも看護の役割だと思い、退院後の生活に密着できる訪問看護に挑戦しました。年齢や疾患に関わらず様々な層の患者さまの看護ケアの経験を積み、「生活を支える看護」の奥深さを実感しました。

── 病院と訪問看護では、どのような違いを感じましたか?

病院は常に緊迫した「治療の場」でしたが、訪問看護は「生活の場」に入っていく感覚でした。
患者さまと週1回の定期訪問でお会いし、その間の1週間をどう安全に過ごしてもらうかを考える。生活全体を中長期的な視点で見れるようになったことが、大きなやりがいでした。

そこで地域の医療機関との連携や管理者としての業務も経験したうえで、改めて自分はこれから医療現場だけでなく、地域に根差した在宅の世界に貢献したいという思いが強くなっていきました。

0→1の新規事業の中で、業界間の橋渡し役になれたら

── LITALICOを知ったきっかけは?転職の軸は何でしたか?

LITALICOは、採用担当の方からのスカウトで初めて知りました。
当時の転職軸は3つありました。1つ目は、ライフプランが変わっても長期的に働ける安定性。帰宅時間が遅くなるまで根詰めるような働き方は、ずっとは続けられないと感じていました。2つ目は、存在意義。これまでの医療経験を活かしつつ、新たな分野を学び「自分にしかできないこと」をやりたいと強く思っていました。
3つ目は、今後のキャリア。転職活動のなかでは人事や事務職も検討したことがありますが、人と直接深く関わる仕事がしたいと改めて思いました。医療に付随する分野で、もっと経験を積みたいと考え福祉の分野を選びました。


── 数ある選択肢の中から、なぜLITALICOレジデンスを選ばれたのですか?

病院では「治療優先」でその患者さまとじっくり関わることができない。訪問看護では「時間や制度の制約」で暮らし全体を支えるには限界があると感じました。そこで、医療と福祉の両面から関われる環境を求めてLITALICOを選びました。

訪問看護では、医療的ケアは不要でも、社会的孤立や生活環境の悪化など福祉的な支援が必要な方々と出会いました。そのとき、ご家族の「親亡き後をどうするか」という問題に直面し、福祉の知識や社会的な受け皿がとても重要だと感じました。

そんな社会的な問題を本気で解決しようとする「障害のない社会をつくる」というLITALICOのビジョンに強く共感しました。LITALICOレジデンスは、まさにその課題に挑む「0→1」の新規事業でやりがいや学びも多そうだと感じましたし、私の看護師の経験を活かして医療と福祉の橋渡し役になれるような、そんな存在になれたらいいなと考えました。

次なる開設も見据えた、看護師・支援員育成の整備も。

── 立ち上げメンバーとして、現在はどのようなお仕事をされていますか?

看護師としての専門業務だけでなく、立ち上げメンバーとして多岐にわたる業務に関わっています。入居者さまの健康を守るため、日々のバイタルチェックや服薬管理、急変時の対応はもちろん、ご家族や医療機関との連携も大切な役割の一つです。
特に健康管理という面においては、日々の観察がとても重要だと思っています。入居者さまは自分で状態を伝えることが難しいことが多く、数値や表情、いつもとは異なる行動や様子など、いかに細やかな客観的情報を拾ってアセスメントするかが大切です。まずは通常の様子を見て、適切に情報を拾うように意識しています。

また、前職の経験を活かし現場全体の支援体制づくりにも携わっています。支援員の研修プログラムの作成や、OJTを通じた育成も担当しています。福祉経験のある支援員から学びつつ、医療と福祉がうまく繋がる現場づくりを意識しています。現在は、将来の多拠点展開を見据え、新しく入職する支援員が安心して働けるような教育体制や仕組みづくりにも力を入れています。プロジェクトの初期段階から関わることで、ゼロから創り上げるやりがいを感じられる一方で、柔軟に動く力や現場を見渡す視点も養われていると実感しています。

──福祉業界でのお仕事自体が未経験だったとのことですが、何か学びはありましたか?

医療には「ある程度の正解がある」けれど、福祉には「その人ごとの答えがある」ということを日々感じています。例えば医療では「転倒を防ぐためにどうするか」とリスクに着目して物事を考えがちですが、福祉は「どうすればできるを増やせるか」を考えます。

例えば、転倒しやすい方に対しても、「どうすれば歩けるか」「どんな支援があれば安心して動けるか」というふうに、できる力を引き出す視点で関わるようになりました。また、一度うまくいった施策が、コンディションによっては効果がないことも多々あります。その都度柔軟に向き合う必要がある難しさと奥深さを感じています。
グループホームや児童福祉で経験のある支援員の動きや声かけからも多く学び、「チームで支援する力」の大切さを強く感じています。福祉業界での仕事は未経験ですが、今ではこの現場ならではの学びが毎日の糧になっています。

「利用者さんのために」を考えられる仲間と、1日1歩ずつ

── 看護師として、どんなホームを目指していきたいですか?

看護師が常駐しているグループホームはまだ少なく、だからこそ、医療と福祉が本当に連携できるホームづくりを目指したいです。
例えば、水分補給ひとつ取っても、「必要な水分量はどれくらいか」といった医療の視点と、「どうすれば無理なく飲めるか」といった福祉の視点、両方をあわせて考えることが必要です。職種関係なく密に連携し、入居者さまにとっての最適な支援をみんなで考えていける。私自身が医療と福祉の橋渡し役となり、この支援体制そのものをLITALICOレジデンス事業全体の強みに変えて、安心感につなげていきたいと考えています。

また看護師といえば病院というイメージが強いですが、福祉の分野だからこそできる看護があり、そこにやりがいを感じています。その魅力を実践を通して発信し、看護師のキャリアの選択肢が広がり、この道を選ぶ人が増えればと思っています。

── 今後、どのような仲間に参加してほしいと感じますか?

チームの雰囲気はとてもオープンで、困ったことがあればすぐに相談できる安心感があります。どの支援員も一番大切にしているのは、判断を一つするにとっても「入居者さまにとってどうなのか?」という視点を最も重視しているということです。経験豊富なベテランであっても、「こうした方が良いからこうする」という自分軸の支援ではなく、常に入居者さまを第一に考えられる人と一緒に働きたいです。そして支援を日々試行錯誤しながら形作っていくので、その過程を前向きに楽しめる方と「安心・安全な住まい」を作っていけたらと思います。

── 吉田さんにとって、LITALICOレジデンスはどんな場所ですか?

今はまだ立ち上げたばかりで、発展途上だと感じています。看護師本来の業務がまだ満足いく形ではできていないですし、人員体制ももっとより良い形に改善していきたいと感じています。
新規事業の1拠点目ということで、大変なことばかりですが、みんなが同じ想いを持っていて、とても人がいいというところが救いですね。この佳境を乗り越えられているのは、周りのメンバーのおかげです。「1日1歩でも前に」を大切に、これからも医療と福祉の視点を融合させた唯一無二のLITALICOならではのホームをつくっていきたいです。

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