「ふつうの暮らし」を届けるために。サビ管としてグループホームの新たな形を目指す、新規事業立ち上げの日々
LITALICOレジデンス 井の頭公園インタビュー

「安心・安全」の先の、豊かな生活を届けたい
藤鷹さん
新卒として社会福祉法人に入社後、入所施設、就労継続B型、生活介護、グループホームと多岐に渡る支援の現場を経験。2社目では後に就労支援の現場で支援員、ならびにサービス管理責任者となる。現在は2025年に開設したLITALICOレジデンス(重度障害者向けグループホーム)事業においてサービス管理責任者として従事。立ち上げからスタッフ育成、支援の現場対応まで幅広い業務に携わる。
―― 福祉業界でのご経験が長い藤鷹さん。これまでのご経歴を教えていただけますか?
もともとは小学校の先生になりたかったんですが、受験の関係で興味のあった福祉学科に進むことになりました。
新卒では、千葉県の知的障害者向け入所施設に5年間勤務しました。入所施設や、グループホーム、生活介護支援事業所の支援員など、さまざまな立場で生活支援と日中作業の両方に携わりました。多様な障害を持つ方と深く関わる中で、「安心・安全だけではない、より豊かな生活」を追求することの大切さや、家族連携の重要性など、福祉のベースをここで全部教わった感じです。
当時は、毎日が刺激的で、とても楽しかったですね。
業界全体に問いかける、LITALICOの「挑戦」
―― LITALICOにどのような印象を持たれていましたか?
前職では組織的な課題から退職を考えるようになりました。会社の対応に課題があると感じたとき、「自分の貴重な時間を、この会社に費やしていいのだろうか」と自問するようになったんです。
そんな時、LITALICOが重度障害者向けのグループホームを、都内の駅近という好立地で立ち上げるというLITALICOの求人を見つけました。精神障害者向けのマンション型グループホームはよくありますが、日中サービス型の重度障害者向けかつ都内駅近でのグループホームもとても珍しく、「なんてチャレンジングなんだろう!」と強く惹かれました。
また、私はこれまでの経験から、医療や介護業界全体に対して「こうなったらいいな」という想いをずっと持っていました。LITALICOは、業界全体に影響を与えられる力のある会社だと感じていたので、ここでなら自分のこれまでの課題意識をもって業界を変えていくチャンスがあるのではないかと感じ、入社を決意しました。
立ち上げフェーズだからこそ見える、支援の理想と現実
―― 立ち上げ時期のエピソードや、現在の業務内容で日々どんなことに取り組んでいらっしゃるか教えてください。
LITALICOレジデンスの立ち上げは、建物がほぼ完成している状態から入居者さまが確定した流れでした。しかし、利用者さまのリアルな生活イメージを持ちきれず、実際は「ご利用者さまに合った設備がない」という課題に直面しました。例えば、玄関のドアが手動施錠であることで、人の出入りの度に支援員が対応しないといけない、かつ利用者さまが誤って外に出てしまう可能性があること。またナースコールも手で押すものを準備していたので、
その肝心なナースコールに手が届かなかったり、誤ってどこかにいってしまったりすると助けを呼ぶことができません。とはいえ不平不満で終わらせず、会社に交渉できる部分は交渉、一方で今ある設備の中から「どうしたらご利用者さまと支援者の安心と安全の提供できるか?」、ご家族や業者さんとも相談を重ねながら取り組んでいます。
現在は、サービス管理責任者として利用者さま一人ひとりの支援計画を作成しています。開設して間もないということもあり、今は自分自身も一支援員として現場に入り、勉強している状況です。そのおかげもあって、支援員たちとは良い関係性を作れていると思います。サービス管理責任者は事務員ではないので、まずは利用者さまと関わる中で、心を開いてもらい、希望ややりたいことを引き出すことができる、知ることができるというのはメリットだと思っています。
―― ご家族との連携についてはどうですか?
個人的に非常に重視しています。特に若い利用者さまが多く、ご両親はとてもお子さんを大切にしていらっしゃる中で、家族亡き後を見据えて勇気をもって送り出してくださったケースがほとんどです。ご家族には「ともに利用者さまを支える仲間」になってもらうため、お会いした際は絶対にお声かけをしてコミュニケーションを怠らず、ご自宅のように安心して過ごせる場所であることを感じていただけるようにしています。利用者さまの幸せはご家族の幸せ、ご家族の幸せは利用者さんの幸せです。
施設でなく「自分の家」と思ってもらえる場所に。
―― LITALICOレジデンスにはどのような方が利用されていますか?また、サビ管として日々どんなことに気を付けていますか?
学校を卒業した後の若年層からの需要が高く、とてもフレッシュで元気な方が多くいらっしゃいます。しかし、若い方たちが24時間一つの家で過ごすことは、一般的に考えてもストレスになりがちです。有り余ったエネルギーを発散できるよう、最近では日中活動の提供の仕方を再構築したり、必要だと感じる方には移動支援の利用をすること、他の生活介護の利用など関係機関連携も計画相談と一緒に模索しています。
一方で、サビ管としては、利用者さまにとって一番良いことと、事業を存続させるための収益のバランスを常に考えています。例えば、利用者さまが日中外出もしくは外泊が多くなってしまうと当然収益率は下がりますし、毎日の入浴を叶えると、午後いっぱいは入浴対応でスタッフが手一杯になり、他の日中活動が提供できなくなってしまうことで、それもまた外出や外泊にも繋がるといった課題もあります。
そうした中でも、私はご家族には正直に現状や進捗、今後考えていることをお伝えするようにし、納得いただける形で今の私たちの力で提供できる活動を選んでいただくコミュニケーションをとっています。また、利用者さん一人ひとりができること、好きなこと、などが違うので画一的な同じ活動はできず、個別対応が不可欠だと感じるようになりました。今は、日勤の支援員ごとに担当を決め、その日の活動に責任を持ってもらっています。支援員の意識が変わることで、日々の活動も豊かになり、利用者さまの小さな変化をご家族にも伝えられるようになってきました。
0→1を生み出す楽しさ。誰もが自分らしく暮らせる未来へ
―― 新規事業の立ち上げに携わった感想と、LITALICOの文化や人柄について教えてください。
私は、これまでにない形式のグループホームの新規立ち上げという、0から1を生み出す経験がしたくて入社しました。想定以上の大変なことはたくさんありますが(笑)、その大変さこそを楽しみにしていたという感じです。事業の方針から新人育成、建物の設備面まで、全てに関われるのは、中途入社ではなかなかできない貴重な経験だと思います。
何よりも嬉しいのは、上司がしっかりと私の話を聞いてくれること。自分の意見を発信したら、誰かがしっかりと受け止めて応えようとしてくれるのがやりがいであり、ありがたい環境です。
逆に決められたものの中で楽に仕事をしたい人には、ここは少し大変かもしれませんが、自分で考えてサービスを提供できることを魅力に感じる人にはぴったりの環境だと思いますね。
―― 今いるスタッフとのチーム支援についてはどう感じますか。
立ち上げの時期ということで「ほんとに大変!」という声があがることもありますね。そうは言いながらも、開所前から開設後までしっかりと責任をもって業務をやってくれているのは凄いことだと私は思っています。「利用者さんにとっていいか悪いか」、という視点を常に持って物事を判断できる、優秀なスタッフたちがこんなに揃っていることも非常に幸いなことで私自身日々勉強させていただいています。
―― これからのチャレンジについて教えてください。
LITALICOレジデンスとして大切にしたいのは、「ふつうの家」のような施設ですが、「安心安全、おいしい食事が食べれて、きれいな部屋でゆっくり眠れる」という願いを叶えることに留まることはしたくないんです。「毎日お風呂に入りたい」、といった毎日の自然な希望をかなえつつ「たまにはどこかへお出かけしたり、旅行へ行きたい」「ネイルしてパックしておしゃれしたい」といった願い。ときには、今までできなかったことに対して、「ここでならできる!一緒にやってくれる支援員がいる!」と新たなチャレンジをしてみたい方もいるかもしれません。
毎日の安心安全は当たり前のこととして届けながら、利用者さんやご家族の前向きで積極的な思いも引き出し、大切にしたいです。会社という狭い中で留まらず、グループホームしいては福祉事業として「当然にできること」の可能性を広げていくことが、LITALICOの新規事業としての役目であり、これから各地に事業を広げていく中で叶えられたらいいですね。