個別最適な教育の専門性をもっと高めたい。ご家庭の未来のために本質的な課題をみつける、LITALICOジュニアの仕事とは?
パーソナルコース新卒社員へインタビュー
アフリカでの子どもたちとの出会いで、世界の現実を知った
大平(おおだいら)さんプロフィール:
大学院卒業後、LITALICOへ入社。LITALICOジュニア(パーソナルコース)の指導員として教室でお子さまに発達支援にかかわる授業、ならびに保護者対応をしながら中高生、大学生の自立支援サポートにも携わっている
ー 学生時代はどんな活動に力を入れていたのでしょうか。
大学時代の学部・院では国際開発や教育分野にかかわることを研究対象としていました。大学1、2年次にアフリカのマラウイという国にそれぞれ短期滞在、大学4年次には休学してケニアにもインターン経験があります。当時ケニアで出会った同い年の20代の青年は、恐らく発達に困りを抱えていて、「椅子に座れない」という理由で学校から就学を断られていました。自分自身の日本での境遇との違いを感じたと同時に、生まれた環境によって教育の機会をはじめとするさまざまなライフチャンスが不平等になってしまうという現実を目の当たりにしました。
こういった海外での経験がきっかけで、人が生きる根幹ともいえる「教育」というテーマに目が向くようになりました。とくに一人ひとりの違いに合わせた学びの機会を提供する個別最適な教育や、バックグラウンドや障害の有無に左右されないインクルーシブ教育の分野に興味を持つようになったんです。
ー LITALICOとの出会いは?
大学在学中に、自分のように教育を研究対象としている人向けのイベントに参加したことがきっかけでした。採用担当の方と何度か面談する機会もありつつ、LITALICOワークスの支援計画を作成するためのシステム開発に少しだけ携わった経験もあります。それらの過程で出会ったLITALICOの方々がとてもやさしく、ビジョンや理念に共感されている様子も素敵だな、と感じていました。
院を卒業して新卒として入社する会社を選ぶにあたっては最終的に国際開発系の分野と、LITALICOで悩みました。ただ、ファーストキャリアではより当事者であるお子さまやご家族に近いところで働き、教育の専門性を高めて、知見を増やすことを優先したかったので、指導員としてLITALICOジュニアの学習事業(現在のパーソナルコース)に参画することに決めたんです。
お子さまとの信頼関係を築き、心を開いてもらうことが大切
ー教育に関するお仕事ははじめての経験だったと思いますが、入社後の研修制度はどうでしたか?
LITALICOの指導のベースとなっている応用行動分析という理論について、みっちり研修で教わったので、その点は授業でも役立っています。実際の授業を想定した大人同士のロールプレイングの機会もあり印象に残っていますね。また、お子さまの困った行動があった際、要因の分析や見立てをおこない、授業でどんなことをやるのかプログラムを考える…というのが一連の指導の流れなのですが、モニターのお子さまを交えて行う初期の研修の中でこの練習ができたのはよかったです。
ー 教室での授業はどのように進めていますか?
研修で習う理論の部分はベースにしながらも、まずその一人のお子さまと仲良くなる、というのは大切にしています。授業の1回目では雑談や遊びを通じて心を開いてもらい、2回目からお子さまについての情報収集ができるような形で進めるようにしています。
まずは好きなおもちゃを一緒に探しにいき、例えば電車のおもちゃへの反応が良さそうであれば、電車を並べるのか、がたんごとんの音を楽しむのか、など好きな遊び方を探っていく感じです。普段よりもお子さまの発語が増えている、などお子さまが心を開いてくれたとわかるエピソードを聞けた時は嬉しいですね。家庭でも授業で僕と練習したことが実践できている、といったフィードバックをいただけると励みになりますね。
今見えている課題を解決して終わり、ではない支援を
ー お仕事のなかで難しさを感じるのはどんなときですか?
教室外でのご家族や保護者さまとのコミュニケーションも、お子さまの成長にとって非常に大切だと考えています。
例えば家だと保護者さまもお忙しく気持ちに余裕がなかなか持てない、すぐに怒ってしまいがち…といった場合は、お子様だけでなく保護者さまを含めたご家族全体を見る視点が必要になると思います。より慎重にサポートの方針を考える必要があり、ご家庭での親子の過ごしやすさや困りを即座に解決するのは難しいこともありますが、保護者さまもLITALICOにご相談いただくまでの間で、たくさん頑張ってこられているんですよね。だから、まずはその気持ちに寄り添いたいなと考えています。そのうえで「どんな状態がお子さまとご家庭の未来を考えた際によりよいのか?」をともに考え、その中で必要なこと、保護者さまができそうなこと、を順にお伝えしていくのが大切だと考えています。
家でのお子さまへの声掛けの仕方などを提案する際は、保護者さまごとに異なる性格や悩みに合わせて、同じ内容でも伝え方を工夫するようにしていますね。また、先手先手で保護者さまにとってのストレス要因が何か、それを解消する手段はどんなものがあるか?など、お子さま以外のご家族の状態についてもともに考えられるよう心がけるようにしています。
ー入社してからご自身で成長を感じられる部分があれば教えてください。
とある小学生の男の子の例なのですが、当初は友人やご家族とのコミュニケーション面での話し方の課題をいただいていたので、授業で話す内容を整理し、順序良く伝える、などの練習を繰り返し、その点は改善の傾向がみられました。
一方で、その子はスポーツをやっていたのですが、とにかく自信を持てず、練習や試合を振り返る際に自分の悪い部分しか出てこないような感じだったんです。そこでチームメイトのいいところを見つける練習をし、その後自分のいいところも見つけていく…といった自己肯定感を高めるような工夫もしていきました。
ご家族からみて「今」問題だと思う部分や、表出している課題を改善するだけが僕たちの仕事ではないな、と思った事例でした。こういった経験をつみ、本質的にその子が生きやすくなるためにどうしたらいいか、と中長期的な視点で考え方ができるようになったかなと思います。
現場での専門性をいかして「教育」の課題を突き詰めていきたい
ー今チャレンジしていること、今後の展望などがあれば教えてください。
パーソナルコースでは中高生も対象になっていますが、中高生や大学生への支援の経験を活かして、自立支援サポートにも参加しています。年齢の低いお子さまだけでなく、中高生や大学生、成人に近いご年齢の方も対象とし、例えば生活習慣など自立のサポートをしていくもので、LITALICOとしての新たな取り組みにチャレンジさせていただいています。
僕自身は、研究者気質なところがあり、自身の支援の専門性をより高めていきながら、将来的には関心のあるインクルーシブ教育などの分野の課題を突き詰めて考えていけるような仕事に携われたら嬉しいなと思っています。LITALICOジュニア全体でも、支援の手法や授業の進め方について、どの指導員でも研究結果やエビデンスに基づいた支援やご家庭への説明がさらに充実してできるように仕組み化していく部分にも興味があります。今でも、インプットした情報をまとめたりするのが好きで、保護者さま向けの資料作成などにいかしています。
今後のキャリアについては、スペシャリスト系、マネジメント系などさまざまなキャリアの選択肢がありまだ迷っている最中ではあります。周囲の人たちが親身に自分のやりたいことや将来について話を聞いてくれますし、自分の進む道を自分で選びやすい環境だと思いますね。
ー教育の専門性を高めていきながら、より自分の興味のある分野の課題解決に向けて力を注ぎ、ひとつでも多くのご家庭の役に立てたら、と話す大平さん。これからのパーソナルコースでさらなる活躍をいただけそうですね。お話いただきありがとうございました!(編集)