「障害のない社会」の作り手になるために。LITALICOワークスの組織・育成に携わるHRリーダーの対談インタビュー。
LITALICOワークス HRインタビュー
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障害を理由に分け隔てが生じる社会を変えたい
プロフィール
高橋さん(写真右)
地域の福祉に約15年ほど従事し、障害のある方の入所施設や、居宅介護、短期入所、生活介護などの経験を経て、2014年、LITALICOへ入社。ワークス事業部にてジョブコーチやサビ管、サビ管のエリアトレーナー、エリアマネージャーなど社内の多様な役割を経て、現在はHR部門で研修やサビ管登用前の研修に携わる。
プロフィール
山本さん(写真左)
小学校教職員を経て、LITALICOジュニアに2013年入社。その後、ワークス事業部に異動しジョブコーチから1年後にセンター長登用。人事採用チームでのアシスタントマネージャーを経験したのち、一度別の企業にて新規事業立ち上げなどに携わり、4年ぶりとなる2025年に再入社。現在はHR部門で新卒の採用・研修に従事。
— まずはお二人のこれまでのキャリアと、LITALICOにご入社されたきっかけを教えてください。
高橋: 僕は前職で長年障害のある方の生活支援に携わっていました。ある時、利用者さんがお店で商品を倒してしまったことがあったんですが、店主から「そんなやつは外に出すな!」とひどい言葉をかけられたことがあって、ご本人が社会から認められていないと感じて本当に悔しかった。
そこで、障害のある方々の存在価値が社会に認められるための一つの在り方として、働くことを通じて社会に参加することなのではないかと感じたんです。そのための就労支援のノウハウを求めていたところ、LITALICO(当時のWINGLE)の理念に共鳴したのが入社のきっかけです。
山本: 僕は小学校教職員でした。生まれ育った地元ではどちらかといえば障害のあるなしにかかわらずごちゃまぜの環境が当たり前だったのですが、縁あって別の地域の学校に赴任したとき、支援級の子たちが隔離されているように感じる教育環境で、疑問に感じたんです。
次第に、子どもたちが環境に合わせる画一的な教育ではなく、より個々に合わせた柔軟な環境側をつくることができないかと思うようになりました。「障害は個と環境の相互作用の間にある」というLITALICOの考え方を知ったときに、まさにそうだ、と思ったんです。「障害のない社会」をつくるという壮大なビジョンを実現したいと強く感じましたし、教育の仕組みなど環境そのものをつくる仕事をしたい!と思い、転職を決めました。
とことん語り合うことで新たなチームをつくる
ー お二人は、以前関西のセンターでセンター長とサビ管として共に働かれていたとのこと。特に印象的だったエピソードはありますか?
山本: 僕がジュニアからワークスに異動して1年ほどで、高橋さんが当時サビ管をされていたセンター長になったんです。確か僕の着任初日に地震が起きたんですよね。
高橋: そうでしたね。センター長初日に緊急時対応が必要になって…。「この人ついてないなー(笑)」って正直思いましたよ。
山本: でも、その緊急時に高橋さんをはじめ、みんながお互いを知らない中でセンター長の自分を頼ってくれたことにすごく救われたんです。そこでセンター長としての覚悟が決まり、ここで頑張っていこうという決意につながった感じでした。
高橋: 実は当時のセンターは、「個」のスタッフ一人ひとりが立ちすぎていたような感じで、チームワークという点では発展途上の段階でした。山本さんが赴任したとき、「チームをひとつにする」というミッションで来てくれたんじゃないかと感じていましたね。
メンバーさんからの苦情が多く出ていたり、社内でもセンターへの評価があまりよくないような状況あり、まずはチームの雰囲気を前向きに変え、運営自体を見直すべきタイミングでした。
ー 運営を改善していかなくてはならない中で、お2人はどんな動きをされていたんでしょうか。
山本:緻密な戦略を立てて関わっていたという感じではなくて、とにかく「お互いの持っている背景を知る」ことは大切にしたいなと思っていました。高橋さんとも、毎日2人で仕事終わりに飲みに行っていましたよね。チームや支援をどうしていくのがよいのか、理想はなんなのか。自分の過去の話も含めて腹を割って話し続けた感じです。
高橋:ほぼ毎日でしたね(笑)。でも、自然と仕事に対する愚痴みたいなものは、一切出てこなかったんですよね。
山本: 「あのスタッフさんの、こういう対応が輝いてたよね!」「次はこういう環境を用意したらもっと輝くだろうね」といった感じで。スタッフのいいところをお互いに話し合う時間も多かったです。濃密なコミュニケーションでセンター長とサビ管の目線が合うと、チームはどんどん良くなって、役割分担もうまくいく感じがしました。
高橋: チーム運営にも、山本さんならではの工夫がありました。公園でブルーシートを広げてセンターミーティングをしたり、チーム構築のためのワークショップを毎週のようにおこなったり、LITALICOのビジョンに共感いただいた地域のお店に、共通の想いを可視化した「Withマーク」というシールを貼ってもらうという取り組みをしてみたり…。今までにない形でセンターをまとめていってくれたと思っています。
異なる視点や意見があるからこそ、支援観が磨かれる
— 高橋さんは長年福祉の生活支援、山本さんは小学校教職員という全く異なるバックグラウンドですよね。それぞれの視点を持つことで、どのような相乗効果が生まれたと感じていますか?
高橋: 僕は知的障害のある方の支援からキャリアをスタートし、常に利用者さん主体という福祉の世界で生きてきました。「利用者さんが幸せでないと、スタッフは幸せになっちゃいけない」という感覚があったんです。でも、どこかで違和感も抱いていました。
そんなとき、当時の山本さんは、「よりスタッフも楽しめる環境を作ることで、さらに利用者さんに良い支援ができる」ことを大切にしているなと感じました。僕のその後のキャリアの中でも、利用者さんもスタッフも両方ファーストで考えることが、僕のマネジメントやHRの仕事における揺るぎない軸になっていると思います。
山本: 僕は逆に、福祉の現場での仕事はワークスが初めてだったので、高橋さんがずっと「福祉ってなんだ?」「支援ってなんだ?」という問いを立て続けてくれたのが大きいです。問いとしては、例えば「利用者さんにとっての”本当の幸せ”ってなんなんだろう?」など。答えのない難しい問いに対して、お互いに語り合っていくことで、僕の支援観の軸が確立されていったような気がしています。
高橋: 大事なのは、「支援の正解はご本人側にある」というスタンスで、支援者はご本人がどうありたいのか?何を願っているのかをずっと考え続けることだと思います。支援される利用者さん側は、支援者の言うことが正解で、その通りにやらないといけないと思われることもありますからね。
山本: センターにいた頃、とあるスタッフが利用者さんに「死ぬ気で頑張れ!」という言葉をかけてしまって、議論になったんです。でも、利用者さん自身がワークスを卒業されるときに「あの言葉を言ってもらえたことで、自分は救われた」と語ってくれた…というエピソードもありました。
もちろん一般的な支援の常識では避ける言葉かもしれませんが、その方に寄り添った結果、信頼関係の中で、言葉の持つ意味が変わることもある。正解は一つではないということを学びました。
自分の中での得意・強みを軸に築いていくキャリア
— お二人は何度かLITALICO内で異動もありキャリアを築かれています。社内でのキャリア形成についてどう感じていますか?
高橋: 僕は、目の前の仕事一つひとつが「障害のない社会をつくる」という未来にどう繋がるかを常に考えています。だからこそ、LITALICOのビジョンそのものが、僕自身の「やりたいこと(Will)」なんです。もちろん、タスクとしてやりたいことが叶わない瞬間もあると思いますが、自分のやりたいことは「大きく」見た方が私はキャリアを歩みやすいと感じます。
また、LITALICOでは周りの人が常に社員を見てくれていると感じます。マネージャーが「この人の強みを活かすにはどういう役割がいいか」を考えてくれた結果、僕の場合は今のサビ管育成・研修につながる役目を提案してくれていたんだと思います。逆に、自分から発信すればそれが叶うチャンスも豊富な職場環境だとは感じますね。
山本: 僕自身はもともと「こういうキャリアにする」という明確なプランがあったわけではないんです。ただ、「みんなにとって良い環境を作れる人でありたい」といった「自分はこうありたいというベース」はずっと心にありました。場や組織の中でみんなが前向きになれたり、「自分はありのままでいいんだな」と自分を肯定できるような空気感を作りたいと。
漠然とした軸ではありながらも、社内で与えられた選択肢を「これ楽しそう」「ここなら自分のやりたいことが試せそう」という気持ちで、直感でポジションを掴み取っていった結果、振り返ったら今のキャリアになっていた、という感覚が強いですね。ぼんやりとでも大事な軸が一つでもあれば、あとはしなやかにあるものの中で楽しむこと、が大切だと思います。
孤独ではない環境を、育成・研修の段階からつくる
— 現在、お2人ともHRとして育成に携わっていらっしゃいます。どのようなことを大切にワークスの研修を設計されていますか?
高橋(サビ管育成):「サビ管」と聞くと、大変な職務なので自分にできるかどうか…という方も多いと思います。これまで自分が一緒に働いてきたLITALICOのサビ管には素晴らしい人材が多いので、引け目に感じてしまう方もいらっしゃるようです。
そのため、研修・育成の段階では、まず「ロールモデルストレス」を軽減したいと思っています。みんなそれぞれでいいし、これまでやってきた経験を信じてほしい。LITALICOのサビ管は、法的な必須の業務以外はチームで分担していけるので、むしろ「まずは関係構築力や相談力、調整力をつけて一人で抱え込まないようにしたほうがいいよ」、というメッセージを伝えるようにしています。
山本(新卒育成): 育成で届けたい感覚としては、僕も似ています。新卒の方一人ひとりにとっての応援してくれる存在や「横の繋がり」を多く作っていくことで、何かあったら相談したり、支え合える、組織的なレジリエンスを育みたいと考えています。研修の内容も知識習得だけでなく、お互いに情報や気持ちを分かち合い、内省する場を作ることも大切にしていますね。
高橋: 全国に広がるサビ管のネットワークや、支援について相談できる仕組みもある。「孤独じゃないよ」というメッセージは、新卒・中途問わず、LITALICOの育成で最も大事にしていることだと思います。
一見矛盾しそうなものをつなげ、変化を楽しもう
— 最後に、LITALICOワークスでこれからキャリアを築きたいと考えている方に、お二人からメッセージをお願いします!
高橋: LITALICOが目指す「障害のない社会」に向かうための手段は、果てしなく存在します。だから、「こういうやり方でないとだめだ!」と手段を限定して考えない柔軟性が必要なのではないかと僕は感じています。無数のアイデアを持ちながら、それをチームとして行動で実現していきたい、という姿勢の方が集まっているなと思いますね。
壮大なビジョンに向かう中で、困難がありながらも楽しめる方、ワクワクできる方、好奇心が持てる方、柔軟性のある方にはぜひ来てほしいです。手段や正解を限定せずに、幅のある考え方で社会の変革に携わりたい方には最高の環境だと思います。
山本:先ほど、スタッフ自身も働いていて幸せな環境をつくりたいと伝えましたが、一方で「この会社は自分を幸せにしてくれる」と、ともすれば他人任せにならないように気をつけています。「自分が仲間を幸せにする!」「自分が社会をより良くするんだ!」という作り手側であるという感覚が大切なのかなと。
LITALICOは、社名自体が利他と利己という言葉の組み合わせであり、一見矛盾しそうなものを両立させることで新たな価値をつくる組織です。福祉とビジネスの両立、ビジョナリーでもありリアリストでもある、など、バランスが難しそうなところを「行ったり来たり」できるしなやかさが求められます。ある意味揺らぎともとれるこの環境を、「しんどい」と捉えるか、「面白い」と捉えるか。その両方を行き来するのを楽しめる人が活躍できるのかなと感じています!