2025.07.22

できない理由より、「どうしたらできるのか」を考える。利用者さんの強みを戦力に変え、企業と共に社会を変える仕事とは?

LITALICOワークス 就労支援員インタビュー

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就労移行支援として2005年に設立したLITALICOワークス https://works.litalico.jp/ は、今年で20周年を迎えます。今回は、入社して10年来、LITALICOワークスのセンターで公認心理師も取得し支援のプロフェッショナルとして定着支援や企業連携を推進する、堀さんに話をきいてみました。

「人の力になりたい」原点から、心理学でアメリカの大学へ

プロフィール

LITALICOワークス 堀さん
2015年にLITALICOワークスへ入社。学生時代はアメリカの大学・大学院で心理学を学ぶ。海外でのメンタルクリニックでのカウンセラー経験や強度行動障害の子ども向けのグループホームでの世話人としての仕事も経験。日本帰国後のファーストキャリアとして、LITALICOワークスの支援員となる。5年の実務経験を経て公認心理師も取得。現在は就労支援の現場で定着支援の専門家として日々就職後の利用者さんを訪ね、主に企業訪問を行う。


幼少期は父の仕事の関係で、11歳からインドネシアで暮らしていた堀さん。中学3年生までは日本人学校に通い、その後、急遽現地のインターナショナルスクールへ進学しなければならないことに。そこから英語を猛勉強されたそうです。

ー アメリカで心理学を学ぶことになったきっかけはなんでしたか?

高校として入学したインター校卒業後は、帰国して日本の大学に進学することを考えましたが、臨床心理士資格を持つ母の知り合いが「英語ができて、心理学を専攻したいなら先進的に学べるアメリカの方がいい」、と強く勧めてくれたのをきっかけに、アメリカの大学に入学。大学では常に課題も多く、言語の壁もあり非常に大変な道のりでしたが、周りの人に恵まれ、教授や友人の助けもあり院まで進み、無事に卒業できました。

ー 心理学への興味が高まったのは、どういったきっかけからでしょうか?

大学時代の友人にLGBTQの方がいて、カミングアウトされたことが一つのきっかけでした。当時は世の中で子どもの心理学に注目が集まるような事件や書籍も増えはじめており、そこから本格的に心理を学んでみようと考えるようになりました。また、祖父が「困っている人を助けたい」という信念の強い人で、私も小さいころ一緒にボランティアで障害者施設に一緒に行き、知的障害やダウン症の子どもと関わる機会がありました。福祉や医療に携わるようになったのも、そんな祖父の教えや原体験があり人の力になりたいと思ったからかもしれません。

海外でのカウンセラー経験を、日本の就労支援にいかす

アメリカでのカウンセリング経験もあった堀さんですが、帰国子女だったこともあり、企業研究の仕方もあまりわかっていない中での日本での就職活動。ご自身の海外でのご経歴をいかせると感じた場所は、LITALICOしかなかったと言います。

ー LITALICOへの入社はどういった経緯だったんでしょうか?

LITALICO以外にも障害者就業・生活支援センター、地域支援センターなどを受けましたが、履歴書がほぼカタカナで埋め尽くされている私の経歴だと、戸惑われてしまうことも。ここで働いても自分は浮いてしまうんじゃないか、と感じました。

一方、LITALICOは私の経歴をむしろ面白がってくれたんです。当時の面接官とのお話が非常に盛り上がり、ディスカッション自体もとても楽しいと感じました。この人たちと働けるならこの会社がいい、と思い入社を決めたんです。異国の地でのカウンセラーとしての学びを、LITALICOワークスで日本の社会を変えるために是非いかして欲しいと言ってもらえました。


「治療」ではなく「支援」。難しさとやりがい

実際に入社してみて、LITALICOでの日本の「就労移行支援」の福祉サービスについては未知の領域でもあったため、最初は面談の仕方や利用者さんとの向き合い方に戸惑うこともあったそうです。

ー 転職してから不安だったこと、苦戦したことはありましたか?

日本の会社で働くこと自体が初めてで、特に日本特有のビジネスマナーには不安がありました。「もしもし」と電話に出てしまったりして、上司に呼び出されたり…(笑)。利用者さんと一緒に研修で名刺交換の練習をしたり、先輩にメールを見てもらってから送ったりもして、一から学んでいきましたね。

また、就労支援は「生きづらさを抱えながらも、どうすればその人が働くことに繋げられるのか」にフォーカスする分野です。例えばPTSDの方のトラウマに直接アプローチするような「治療」とは異なり、「就労支援」であれば、例えば「親から虐待を受けているが、もし就職が適えば家を出るという選択制が持てるようになるーー」という考えがベースです。

LITALICOは医療機関ではないので、この2つの違いを理解するのには一定時間がかかりました。最初はカウンセラーの視点で、利用者さんの目の前の課題解決に向けて踏み込みすぎてしまったんです。制度上、2年間という支援の制限もあるため、障害や困りのすべてを解消しようとすると間に合わない。だから、悩み事を根本から解決するのではなく、就職に向けた「仕事」に関連した悩みや課題解決をしていく、という視点が求められました。

ー そのような難しさを感じても、就労支援の分野でお仕事を続けられているのはなぜでしょうか?

チームで利用者さんについて話すケース会議の場で、皆が私の発言を親身に聞いてくれたことは非常に励みになりました。他のスタッフは心理が専門ではない方も多いので、私の経験をいかして投薬やカウンセリングの視点が役に立つことが多いと気づきました。
また、公認心理師として就労支援の職に就いていること自体が一般的には珍しいのですが、「この仕事は私にしかできないことなのでは?」と感じるようになりました。今では就労支援と治療の両方の視点でバランスよく利用者さんを見られるようになっていて、ここは自分にとって大きな成長だと感じています。



感情が溢れそうな日も、「心の中に堀さんがいる」

印象的な利用者さんのエピソードとして、感情の起伏が激しく、コントロールに課題があった利用者さんの事例を教えてくれました。

ー 特に印象に残っている利用者さんとのエピソードがあれば教えてください。

感情のコントロールが難しく、興奮すると意識を失ってしまうくらいの重い障害のある利用者さんがいました。ご家族との関係も思わしくなく、本当に働けるのか、不安の大きいケースでした。その方には、とにかく「自己対処の大切さ」を伝えました。頑張りすぎてしまった時には「現状維持で!低空飛行でやっていこう!」と根気よく伝え続けたんです。
すると、その言葉が支えになったようで、企業へ就職した今でも「私の心には堀さんがいて、現状維持!って言ってくれる。仕事で感情が出そうになっても、踏みとどまることができるんです。」と教えてくれます。結果的に3年半の定着支援期間を終えることができ、今でも職場でご活躍されています。

現在は、定着支援の専門家として利用者さんが就業した企業へ出向くことが多いという堀さん。企業との連携を高めていく中で、障害のある方への社会における偏見や見方を変えることも、重要なミッションだととらえているそうです。

ー 企業の方々との連携で心がけていることはありますか?

企業側が障害者雇用に対して経験がなく、入社後の対応に戸惑って腫れ物扱いされてしまうケースをお見受けすることもあります。でも、例えば利用者さんの「誰よりも間違えずにデータ入力ができる」といった強みを私からお伝えしたり、私と利用者さんが気軽にやりとりしている様子をみて「職場でもこうやって接したらいいのかも」と学びを得てくださることもあります。

障害者雇用について悩んでいる人事や企業の担当の方は思った以上に多いです。彼らからニーズを拾い、しっかりとサポートする、という姿勢は利用者さんに対する支援と変わらないと感じています。地道にこうした企業側への働きかけを続けることで、社会全体の障害に対する見方が変わっていくのではと考えています。


職場の困難をなくすことは、社会の壁をなくすこと

ー 長年働いてきた中で、どんな部分がLITALICOらしい、と感じますか?

とにかく、ワークスではどのスタッフも目の前の利用者さんの「働きたい」という気持ちに応えようとします。「なぜできないのか」ではなく、「どうやったらできるのか」を真剣に考えるスタッフが多いんです。私自身が、困難が多いケースであっても「絶対にあきらめたくない」と思えば、みんなも一緒にあきらめないで頑張ってくれる、そんな姿勢が素敵だなと思っています。障害があることをマイナスに捉えるのではなく、その方のキャラクターや個性として捉え、「こんなに面白い人なんですよ!」と良いところを企業に伝えていく。これがワークスや私自身が大事にしている支援の姿勢です。

ー 今後、チャレンジしていきたいことはありますか?

障害があってもなくても、働きやすい社会になるべきだと強く思っていますし、そこに向けて引き続き邁進していきたいです。
例えば、大きな声や強い言葉に敏感なAさんが一般的な企業に入社した際のことです。職場の方々がAさんとの関わりを通して、業務中の声量や言葉遣いに配慮するようになり、結果的に課長から「Aさんが入社してから、社員みんなが優しくなり、社内の雰囲気が良くなった」というお話をいただきました。障害のある方々が働きやすい会社は、誰もが働きやすい会社でもあると思っています。障害者雇用枠の人材が企業で活躍することへの可能性を強く感じていますし、いつか社会の壁もなくなると思っています。

ー 最後に、LITALICOへの入社を検討している方へ堀さんからメッセージをお願いします!

LITALICOには、福祉・医療業界でのみ経験をつんできた私のような社員も、逆に支援の経験がない社員も、どちらも在籍しています。福祉経験がなくても、多様な職種・業種を知っているという意味では就活をサポートする際にご自身の経験から強みを発揮されているケースも多いです。

LITALICOは、「社会を変えたい」という志がある方にはぴったりの会社だと思いますし「まだそこまでは…」という方でも、それぞれの強みを活かし合おうという風土がある会社です。面接でも、入社後でも、声を挙げて意見や想いを伝えることを大切にして欲しいなと考えています。支援の現場で働く社員の意見や想いを受け止めずして、社会は変えることはできないためです。「社会を変える」を本気で目指している会社で、一歩踏み込んでチャレンジしてみたいという方はぜひ応募いただけると嬉しいです!

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