イベントレポート:新卒2年目で事業創造にチャレンジ。特別支援の現場を支える「LITALICO教育ソフト」立ち上げの舞台裏
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登壇者紹介
【登壇者】 株式会社LITALICO 学校教育部 副部長 秋元
2019年に新卒でLITALICOへ入社。大学在学中の長期インターンを経て、ビジョンへの強い共感から入社を決意。現在は、自治体向けソリューション「LITALICO教育ソフト」の事業責任者を務める。全国の自治体を飛び回り、これまでの総出張距離は地球7周半に及ぶ。プライベートでは1児の父。
LITALICOへ入社を決めた理由
トークは、秋元のLITALICO入社までの経緯から始まりました。
大学で民間人校長研究をしていた秋元が、教育や福祉の領域に強い関心を抱くようになった背景には、個人的な原体験があったと語ります。
「私には、長年ひきこもりを経験していた人が身近にいた、という経験があります。いろんな支援機関に相談しながらもなかなか物事が前に進まず、本当に支援が必要な人に、既存の社会の仕組みではサポートが届きにくい現実を感じ、『民間企業がスピード感をもって仕組みを作らなければ社会は変わらない』という強い想いを抱きました」
そういった体験から、社会貢献性の高い事業へ興味を持った秋元は、2017年にLITALICOの長期インターンに参加します。そこで出会った優秀な上司や同僚、そして「変えたい」と思う世界を見つけ、「ここなら挑戦・成長できる」と確信し入社を決めたと語ります。
――入社後のキャリアパス:事業責任者になるまでの道のり
2019年の入社後、発達ナビ事業部でカスタマーサクセスに従事した秋元は、ヘルプセンター業務、チーム全体の生産性向上、ヘルススコア(どの事業所に優先的にサポートすると成果が最大化されるかの指標)の策定などを通して、顧客のニーズや価値を最優先に考える「カスタマーセントリック(顧客中心)な事業づくり」を学びます。
その後、2020年に学校向けの新規事業検討チームへ参画。既に自治体と共同開発されていた学校向けの計画作成支援ツール(LITALICO教育ソフトの前身)の事業化を検討し始めます。15自治体との実証研究的な連携をスタートし、LITALICO教育ソフトのプロトタイプであるエクセル版を開発して導入支援を行いました。
さらに2022年12月には、カスタマーサクセスグループのマネージャーに就任。トライアル導入を行っていた約50自治体・約200校を対象に、本格導入と予算化を推進するチームを率いることになりました。
しかし、その道のりは手探りの連続でした。
やるべきことが明確に決まっていたわけではなく、「どのようなアプローチをすれば顧客と事業、双方の成果に繋がるのか」という正解の形を見つけ出すのに、多くのトライアンドエラーがあったと秋元は振り返ります。
試行錯誤の末、秋元が率いる「LITALICO教育ソフト」は、2025年現在、約220自治体 / 約1,600校に導入され、約30名のスタッフが所属する組織へと大きく成長しました。
このようなキャリアを歩む中で、秋元は仕事に対する独自の姿勢を大切にしてきたと語ります。それは、何もない状態でも「やるか、やらないか」ではなく「やるか、どうやるか」を問い続け、チームで正解を創り出していくこと。
そして、キャリアを約80年の長距離マラソンと捉え、無理なく、しかし少しの背伸びをしながら常に役割を越境し、挑戦し続けることです。
「LITALICO教育ソフト」事業立ち上げの経験
――「すべての人の自分らしさを育む」を目指す教育ソフトとは?
ここからは、秋元がゼロから立ち上げた「LITALICO教育ソフト」について、その概要と開発の舞台裏が語られました。
「LITALICO教育ソフト」とは、主に学校の特別支援教育をサポートする自治体向けのプロダクト。
近年、少子化にもかかわらず、特別支援学級などに在籍する子どもの数は増加傾向にあり、それに伴い、特別支援教育を担当する教員数も急増しています。
しかし、多様な特性を持つ子どもたち一人ひとりに合わせた指導を行うことは、経験の浅い先生方にとって非常にハードルが高いという難点がありました。
「LITALICO教育ソフト」は、こうした現場の課題を解決するために生まれました。
具体的には、
- まなびプラン:子どもの個別の教育支援計画や指導計画を作成するシステム
- まなび教材:授業で活用できるデジタル教材
- まなび動画:先生向けの研修コンテンツ
これら3つをパッケージとして提供。先生方の業務を支援しながら、自治体全体で切れ目のない支援体制を構築することを目指しています。
学びを届け、先生方を支え、学校種を超えて学びを繋いでいく。その実現のためにこの事業を行っています。
ビジネスモデルも特徴的で、お金を支払う「自治体」と、実際にプロダクトを使用する「学校の先生」が異なります。そのため、双方のステークホルダーと良好な関係を築き、それぞれのニーズに応えていくことが事業推進の鍵となるのです。
――プロトタイプのExcelを販売することから始まった、0→1フェーズ
続けて秋元は「LITALICO教育ソフト」立ち上げフェーズの苦労についても語りました。
「LITALICO教育ソフト」は2021年頃、わずか3名のチームで検討がスタートしました。今でこそエンジニアにより開発されたソフトウェア型のプロダクトがありますが、当時はまだ影も形もありませんでした。
「製品版をまだ作っていなかった当初はExcelで作ったプロトタイプを自治体に営業しに行っていたんです。『本製品がないと検討できないですね』と大多数の顧客からフィードバックを受け続けながらも、この事業が目指す社会像に共感してくれるお客様を探し続ける日々でした」
ある自治体では、20人ほどの校長先生から一人ずつ「私は使いたくありません」と告げられ、上司と二人で肩を落とした日もあったと、秋元は当時の苦労を振り返ります。売上がない不安な日々の中でも、「モノがないからこそ人間性で信頼を勝ち取ろう」と顧客と真摯に向き合った経験が、事業の礎を築いたのです。
――事業成長の鍵は「総合力」ー変化し続ける組織と役割
当初15自治体との実証研究から始まった事業は、今では約250の自治体で導入されるまでに成長しました。事業フェーズの変化に伴い、秋元自身の役割も、プレイヤーからマネージャー、そして事業戦略や組織づくりを担う立場へと、常に変化し続けてきたといいます。
「事業を成長させる上で、営業やマーケティング、開発というように役割を限定することは本質的ではありません。常に事業や組織にとって必要な役割を見つけ、総合的に動き、変わり続けていくこと。LITALICOの新卒採用で『総合職』の形式を重視している理由も、ここにあると考えています」
LITALICOでスピーディーな事業創造が可能な理由
2020年の検討から2025年現在までの5年間でスピード感をもって大きな成長を遂げた「LITALICO教育ソフト」
なぜLITALICOでは、新しい事業をスピーディーに生み出すことができるのか。その理由を、秋元は次のように語ります。
――顧客の近くにいるからこそ見える「課題」
LITALICOには、発達が気になるお子さん向けの教室「LITALICOジュニア(以下、ジュニア)」のスタッフが学校を訪問する「保育所等訪問支援」というサービスがあります。サービスの現場のなかで「急に特別支援の担当になったが、どう指導すればいいか分からない」といった学校の先生方のリアルな声に数多く触れることができます。既存事業の現場で発見した、まだ解決されていない課題が、新事業の出発点となるのです。
――社内で長年培った資産を活かした「独自性」
事業化にあたり、ジュニアの事業所で長年培ってきた「発達支援のノウハウ」という資産が大きな力にもなりました。
「若手の先生が子どもの実態を見て、スモールステップで指導を組み立てていく点は、我々の教室と学校で共通しています。ジュニアのノウハウを応用すれば、先生方をサポートできるのではないかと考えました」
現場で見つけた課題を、社内の資産を活用して解決する。このサイクルが、他社には真似のできない事業創造を可能にしているのです。
参加学生へのメッセージ
秋元は、これから社会に出る学生に向けて、自身の経験から得た事業創造の3つの原則と、ファーストキャリアを選択する上での軸について話しました。
――事業創造の3原則
- 小さく始めて、小さく成功する: まずは個の力で推進し、小さな成功を積み重ねて勢いをつける。
- Fast Alone Far Together: 小さな成功のあと、大きく成功するために必要な組織を作り、育て、活性化させる。仲間と背中を預け合い、より早くより大きな成果を目指す。
- 圧倒的な自己効力: 目の前の目標達成を繰り返し、「やればできる」という感覚を養う。

――ファーストキャリア選択の3つの軸
こうした挑戦を続けるためには、環境選びも重要です。「オーナーシップをめいっぱい育める環境を選んでほしい」と前置きした上で、ファーストキャリアを選択する上での3つの軸を伝えました。
- 「事業の成長」が、「個人の成長」と信じられる会社/事業であること
- 「新卒が活躍できる」環境であること
- 「背中を預けられる」上司や同僚に出会えること
キャリアに正解はありません。だからこそ、迷ったときは自分の「軸」を信じてみてください。一人ひとりが自分らしく輝ける場所と出会い、納得のいく一歩を踏み出せるよう応援しています。
【最後に】世の中の不条理を、事業の力で解決していく
イベントを通して、秋元は一貫して「事業を通して社会を変える」ということを強調しました。
自身の原体験から感じた「本当に支援が必要な人にサポートが届きにくい」という社会の課題。そして、多様な特性を持つ子どもたちへの指導において、経験の浅い先生方が直面する困難さという教育現場の課題。
そんな世の中の不条理を、事業の力で解決していく。「課題の根本にある構造そのものを事業の力で変革する」という熱い使命感が、秋元の挑戦を支え続けているのです。
「社会課題を自らの手で解決したい」「事業の力で問題解決に挑戦したい」と願う人にとって、LITALICOは最高の挑戦の舞台となるでしょう。


