プロジェクト紹介:発達障害の知識を持った先生を世の中に増やすために
教育事業×政策提言の事例
「10年間で教員を5万人 削減できる」(財務省)
首相直下の教育再生実行会議でも議論されてきたのが「発達障害などの子どもが通う学校内の通級クラスを担当する教員の数が足りていない」という問題だ。学校現場からの要望も強く、10年間かけて3万人の担当教員を増やすという文科省の計画案に対して、財務省は「10年間で教員を5万人削減できる」とメディアを通して発表し、クギを打った形だ。
当時、本プロジェクトを担当していた深澤はこう語っている。
「この時のメディアの反応はかなり悲観的で、通級を担当する教員を増やすことはもう絶望的といった感じでした。社内で緊急の対策チームを発足し、短期間でもできることはすべてやろうと方針が決まりました。スイッチが入った感じです。」
わずか1ヶ月で3万人の 署名を集めて提出する
署名集めの猶予は1か月しかなかったこともあってLITALICO全社一丸となって取り組んだ。インターネットメディアの発達ナビ、LITALICOジュニアの教室はもちろん、すべての事業拠点の社員が署名集めに走った。中には教室の入っているビルのテナントをまわり署名を募った社員や1人で1,000人以上の署名を集めた社員もいた。毎日集計しながらギリギリまで粘って最終日には30,279名に到達。文部科学大臣や関係する国会議員に直接手渡しを行った。
当時のプロジェクト担当社員は、「実際3万人本当に集まるかは不安な気持ちはありましたが、本当に全事業・全社員の協力で毎日増え続けていく署名の数で『あっこれはいけるかもしれない』と次第に思うようになりました。1枚1枚数えて3万人を超えたことを確認した時には
思わず安堵の声が漏れました」と語っている。
メディアの後押しで 大勢が変わっていく
この問題については各メディアの協力も大きく、朝日新聞は署名提出の当日に記事を掲載。日本テレビの報道番組では通級について特集を組み多くの人にこの社会課題を届けていった。難しかったのがテレビ取材に応じてくれる方や署名提出を先頭に立って行ってくれる保護者や当事者のお子さんをさがすこと。発達障害についてはまだ社会認知がなく、子どもが発達障害やその可能性があると周知することは勇気が必要だ。
(深澤)「取材や活動に参加することで、その子自身にすぐメリットが発生するわけではありません。一方でテレビを見た同級生になにかいわれるのではないかなど懸念は数多くありました。」
通級担当教員の基礎定数化が実現
署名提出から約1ヵ月後、今回私たちが目指していた定数化が実現され、今後10年間で約1万人の教職員が増加されることとなった。
様々な団体から後押し、署名提出を受けた国会議員の活動もあってのことだ。LITALICOでは発達障害の子どもの学習サポートをLITALICOジュニアとして行っており、学校の通級指導教員が増えることは事業にとってマイナスではという声もある。
「障害のない社会」の実現に向けて必要なことは子どもにとって多くの選択肢をつくること。今後もLITALICOらしい形で政策提言の機会をつくり社会変革の大きな動きを加速していく。
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