VOL.3
人工知能が人の命を守る世界AIと人間、できることを最適化し最大限の効果につなげる。

  • AIと人間、できることを最適化し最大限の効果につなげる。
  • 適職診断や企業とのマッチングでもAIを活用していきたい。
  • 注力するケースが明確化。より専門性を活かしたサポートが可能に。

STORY

暗黙知を読み取る日本発のAI

人工知能という言葉が数年前からIT業界のトレンドワードに上がってきている。2045年には人工知能の性能が全人類の知性の総和を超えるというシンギュラリティ(技術的特異点)や人工知能が人間の仕事を奪う、コンピューター同士の戦争が起こるなどSFのようなものまで多くの人の関心を集めている。その中で実際に日本や海外で実用化されている人工知能のシステムがあることを知っている人は少ない。フロンテオ社の人工知能「KIBIT」、日本語を読み取り、少ない教師データから暗黙知を理解する日本発の人工知能だ。

「最初にフロンテオさんとの協業の話が出たときは、この技術を何に使おうかというのが焦点でした。一人ひとりの特性に合わせていくLITALICOの事業とは人工知能は親和性が高いと直感的に思いました。就労支援の適正マッチングや教育との相性もよくて、やりたいことがわっと広がる感じでした」(岸田)

最優先で取り組んだのは「人工知能による自殺防止」

プロジェクトメンバーが注目したフロンテオ社の事例は「認知症などの医療現場での転倒防止」。看護師がつける毎日の記録を人工知能が読み取り、転倒リスクが高い患者を判定するという技術だ。LITALICOでは精神疾患の方の自殺リスクとその防止について2014年よりライフネット研究室をつくり研究を重ねている。その知見と人工知能をかけ合わせて、衝動的な自殺を事前に察知できないかということからチャレンジがスタートした。

「自殺を事前に察知することはとても難しいものです。自殺予防に詳しい人って、実はそんなにいないんです。だから、属人的な力だけで急激に察知能力の精度を上げることはできません。でも精度の底上げはしていかなければいけない。そのためには別のアプローチ方法が必要だなと思っていたところにAI の話が持ち上がり、試してみたら驚くほどハマったという感じです」(浅見)

人間とAI、それぞれの役割

自殺の予兆発見のために、AIのスコア基準には「うつ状態」「衝動性」「不安・焦燥」「過緊張」という4つの要素が設定されている。毎日2000件以上の支援記録を、AIで瞬時に分析。分析結果から、リスク2以上の利用者については支援記録をライフネット支援室で確認し、該当者が利用している事業所へ連絡。事業所のスタッフと状況を確認し、危険度が高い場合にはフォローをおこなう。これら一連の連携が、自殺予防に関わるケーススタディ、スタッフの知見や能力向上にも繋がっている。
AIを導入したことで、人間では補えない膨大なデータ量をスピーディに分析できるようになり、課題であった危険予測能力の均一化も実現した。

「AIから毎日300件程度のアラートが上がってきます。その上位10%に重篤化するケースが多いことが分かっています。AIを導入してからは、注視するところが格段に明確になりました。重篤化するかもしれない方を探すことに割いていた時間をサポートに充てることができ効率的です。」(江田)

AIを活用してより多くの人を支えることを目指す

自殺防止においてのAI技術活用もまだこれから精度やその運用も研究段階だ。今後は就労支援における適職診断や企業とのマッチングなどに、AI導入の検討もはじめている。また教育事業でも多くの可能性がある。初期のアセスメントを元に、ひとりに合わせたサービスをマッチングするという点ではAIの特性が大きな効果を生む可能性がある。
AIと人間が連携して、より質の高いサービスの提供を目指す新しい未来は始まっている。

「ライフログや指導記録など、属人的に対応しているところは今後AIが担って、スタッフはより直接的なコミュニケーションに時間を使えるようになると、今よりもさらに細やかなサービスを提供できるようになります。人間の力を最大限生かせるよう、AIなどの技術を使って最適化していきたいと思います」(岸田)

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