2023.01.18

正解のない支援だからこそ、チームで常にエンパワーメントを。入社15年目の社員に聞く、LITALICOワークス研修/育成の仕組み。

LITALICOワークスのHRマネージャーへインタビュー

対人支援職

中途

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研修に関するインタビューの第3弾です。今回は「LITALICOワークス」の研修/育成体制です。
社員が一人ひとりの利用者さんに最適な支援を提供するために、専門的なアセスメントと具体的な計画を立て、本人だけでなく職場環境や関係機関を巻き込みながらその人に合った「働く」を実現していくLITALICOワークス。

創業当時となる2008年に入社したLITALICOワークスの事業部人事(以下、HR)原田さん(以下、原田)から採用担当者が詳しく話を聞いてみました。
※研修の内容や制度は2022年12月現在のものです

LITALICOワークスHR 原田プロフィール

埼玉エリアのセンター勤務でジョブコーチを約1年、その後サービス管理責任者としても約7年間従事し、エリア全体の育成トレーナーを4年間勤めたあと、2020年にワークス事業部HR(人事)所属となる。主に研修全般を担当(新入社員、新卒社員、既存社員向け)。研修コンテンツの設計、運営管理、研修実施のほか、その他、困難ケースのSV、スキルチェック評価、産育休スタッフの管理やサポートの実施も兼務。


ー2008年のLITALICOワークスがまだ立ち上げ間もない時期から自社ではたらいている原田さん。まずはご自身の入社のきっかけを教えてください。

(原田)LITALICOの前には、別の福祉施設で2か所ほど勤務経験があります。そこで障害者施設の部門にたまたま配属となり、利用者の方々が時間をかけてでもできることがどんどん増えていく様子に触れたことがきっかけで、この分野で働く魅力を感じました。

LITALICO(当時の社名は『WINGLE(ウイングル)』)は前職を退職し、出産を経て、再度福祉の仕事に携わりたいと思ったタイミングで応募しました。今となってはたくさんの民間企業が就労移行事業に携わっていますが、当時はまだ民間企業の福祉業界への参入自体が少なくて。関係機関はNPOや福祉法人が多かったので「福祉事業に民間企業が参入した」というだけで周囲で話題になっていたんです。これまで自分が経験してきたものとは違う、新しいやり方で支援に携われるのでは、と思い入社に至りました。

現場でジョブコーチやサービス管理責任者(以下、サビ管)を10年以上経験し、ワークスHRに異動したのは2020年です。一時期一人で研修分野を担当していたこともあり、大変な時もありましたが、現状はチームで研修プランを考える時間が増えており、より楽しく仕事ができています。

LITALICOワークス 研修の全体像

ー長年現場経験がある方が研修を担当されていると安心感がありますね。ここからは、ワークス事業部の研修について全体像を教えてください。

(原田)入社した皆さんに対して、新卒/中途どちらも約1年間の研修期間を設けています。

▼LITALICOワークスの入社後1年間の研修 ※22年12月時点



配属前、3か月、6か月、12か月と研修の機会があり、現場での経験を研修に戻ったときにも振り返り、新たな学びを積み重ねられるようにしています。配属先センターにはSC(ソーシャルコーディネーター)と呼ばれる役割の育成担当者がいるので、現場でも常に実践に対してのサポートや振り返りの機会が設けられています。
受講中、「座学だけ」の形式は基本的にありません。実際に知識をお伝えした後にワークをやってみて、研修担当や周囲の受講者からフィードバックをもらうような作りになっています。
知識を得ただけで急に支援者として利用者さんの対応や実践に至るのはハードルが高いと考えており、研修の中で小さな成功体験をたくさん得て貰いたいという背景のもとです。

ー例えばどんなワークを実施するのでしょうか?

(原田)ワークスが重要視しているコンセプトが6つあるのですが、これは様々な場面で現場のスタッフが用いる共通言語のような内容です。一つひとつの言葉自体は汎用的に使えるように抽象度を高くしているので、じゃあそれって具体的にどんなこと?というのを落とし込んでいく作業を一緒にやっていきます。

「信頼関係を築く」というテーマを理解するための研修を例にあげてみます。
信頼関係の土台となる他者への態度を学ぶ目的で、利用者さんを「よく視る・よく聴く」というのを具体ワークを通じて理解促進していきます。
「よく視る」をかみ砕いたときに、意識せずとも情報が目に入るという事象を体感してもらうために、瞬間的に内容が変ったスライドに対して「どこが変わった?」といったワークをやってみたり。
「よく聴く」について考えてもらうために、自己紹介をするときにわざと話を聞かない態度と、関心をもって聞く態度をとって比較してもらい、お互いにどう思ったか感想を述べあってみたり…



ワークを通じて、ご自身が入社前から元々もっている価値観や知識、経験、スキルも紐づけながら受講者同士でアウトプットしあうので、コンセプトの理解がより進むと考えています。また、支援者主体ではなく、利用者さん主体の支援が出来るようになってほしいので「相手がどう感じたか」とチームで感想を述べあうプロセスも大事にしています。育成者と受講者の一方通行にせず、研修のたびに集まった同期同士で共に業務を振り返り、チーム間でエンパワーメントしあう時間を重んじた設計にしています。

▼研修後の社員のアンケートより一部抜粋

センターへ配属された後のサポート

ー 現場での業務が本格化した後にはどんなサポートがありますか?

例えば、実際の支援にあたる際のスタッフへのサポートを充実させています。センターの中で解決が難しく別の視点が必要となったケースに対して、HRが設けている「ケース相談窓口」に相談いただけます。現場のケース会議にHRスタッフが一緒に入るなどの支援をしていますので、センター内外の経験者のノウハウもうまく活用していただける仕組みになっています。
また、LITALICOが自社で独自に開発したサポートシステムがあり、全ての利用者さんに対して作成が必要な「支援計画」についてはある程度の文言が定型化されているので、PCを用いた作業自体が非常に効率化されています。提供するプログラムも個人が一から全てを作る必要はなく内容が標準化されており、スタッフマニュアルをみてはじめての方でもスムーズに進行することができるようにしています。

ー LITALICOワークスはいわば「誰かのキャリアを支援する立場」だと思いますが、支援者自身が自分のキャリアについて考えるための機会も設けているそうですね。

(原田)2022年に新たに開始した施策として、12か月研修時の「キャリア研修」があります。
約1年間の働き方や出来たことを振り返りつつ、これからの自分自身のキャリアを考える時間なのですが、外部の専門家にも入ってもらい、キャリアの捉え方についての座学研修受講や、自分がこの先どんなキャリアを歩みたいかを考えるヒントを得て貰いたいなと。
入社して1年経つと、他のスタッフのキャリアチェンジを目の当たりにしたり、ジョブコーチからサービス管理責任者やセンター長となったり、異動などを経験する機会も出てきます。普段は利用者さんの転職活動やキャリアをともに考えるお仕事ですが、自分自身のことが二の次にならないように、そして自分もキャリア形成を体験することでよりよい支援につなげて欲しいという思いで設計しています。

入社後のキャリアコースについて

ー実際にキャリアアップした先のコースについてはどんなものがあるのでしょうか。

(原田)支援者としてある一定以上の等級に上がると、専門コースの用意があります。現場の支援の専門家としてのジョブコーチ(JC)、サービスの質に関する管理や支援者の育成を行う育成コース、外部機関や地域などさまざまな関係機関との連携の強化を担う地域連携コース、就職先となる企業への対応に特化した仕事である企業連携コースなどがあります。
就労移行支援にかかわる様々な業務を特定の管理者や一部の役職者だけが担うことなく、スタッフ一人ひとりが自分の身につけたいスキルや今後目指したい方向性に沿って選択することができるようにしています。サービス管理責任者やマネジメント等級という役職においても、等級が約5段階以上分かれていて、半期ごとのMBO評価や等級スキルチェックという試験の受験により、年功序列などは一切なく、ご自身の意思で昇格の機会を得ることができます。

ー さまざまな必要業務がサビ管など特定の人に偏らないようにしているんですね。その他、スタッフ同士で学び合う仕組みなども始められたそうですが。

(原田)「Wazemi(わぜみ)」というゼミ形式の制度を開講しました。応募制で入社1年以上が対象で、全国のセンタースタッフから応募を受けつけています。約5名程度のスタッフとSV1名がセンターの垣根を越えて、1つのゼミとして教室内外で約半年間の期間のなかで講座を進めていくスタイルです。




支援そのものは非常に不確実性の高いお仕事だと思うんです。目に見えないサービスですし、これが正解、という状態もない。だからこそ、自分一人で判断・評価しなくてはならない状況は作らないようにしたいなと。常に自分の支援のあり方を客観的に見つめなおす機会を設けたり、チームで困りごとや悩みを共有しあうことを大切にしています。


ー 利用者さん同士も、支援者と利用者さん同士も、お互いにエンパワーメントし合う関係性を重んじているというLITALICOワークス。研修や育成体制のすみずみまでこの考え方が浸透しており、事業コンセプトに沿った支援を日々進めています。

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