急速な増加傾向にある「精神障害者」の就労 7割が「勤務先に対して満足」、4割が「今後の自身の給与が上がる」と予想
働き手の意識は上向きの一方、「給与面」や「雇用形態」については希望との隔たりも露わに
株式会社 LITALICO(本社: 東京都目黒区、代表取締役社長:長谷川敦弥)では、同社にて運営している障害者の就労支援事業所「ウイングル」を経由して、2012年度から2014年度に企業・団体等に就職された1457名を対象に、2015年4月に「就職者アンケート」を実施いたしました。今回はその中から、2018年の精神障害者雇用義務化を控え、雇用が大幅に増加傾向にある精神障害者の就労後の状況やニーズを把握するため、「精神障害者保健福祉手帳」を取得されている方307名に対象を絞り、調査結果をまとめましたので、ご報告いたします。
【要旨】アンケート結果から
今回のアンケートから、精神障害者の就労について、就職先および仕事内容に関して、一定の満足があることがわかりました。精神障害者の約7割が、所属する企業について「満足」と回答しており、仕事内容への満足度も約6割を越えています。今後の給与額の見通しについても、「上がると思う」と回答した方は約4割となりました。
この満足感に関する要因の一つとして、障害者に対する「企業の合理的配慮」について示すことができそうです。
就職先での合理的配慮に関する実感として、「とても配慮されている・やや配慮されている」と回答した方は7割以上となりました。具体的に行われている配慮としては、「個々の障害状況や体調にあった業務量に調整してくれている」とアンケート回答者の半数以上が答えています。
その一方で、現在の生活状況について、「ゆとりがある」と感じている方は、約3割に留まっています。現在の給与額に関する設問についても、「満足していない」と感じている方の回答が約4割と「満足している」を上回っており、現在所属している会社に今後求めることとしても197人の方が「昇給」と答えています。また、次いで118人が「雇用形態の変更」を求めており、非正社員の雇用形態で働く多くの精神障害者にとって、「自立した、ゆとりのある生活を実感できていない」ことがアンケートの結果から見えてきました。
精神障害者の方にとって、働くことへの満足と、生活状況の現状との間には大きなギャップがあり、今後そのギャップを埋めていく手立てが必要だと考えられます。就労支援事業所「ウイングル」では、今後、障害者雇用において「職種の幅を広げていくこと」「これまで中心だったパート・アルバイトとしての雇用から正社員・契約社員としての雇用率を上げていくこと」「就職後のキャリアアップも視野に入れた就職活動が出来るようにすること」の3 つを課題として、利用者にこれまで以上に満足度の高い就職をしていただけるよう、改善に取り組んでまいります。
【障害者雇用に関する参考情報】
昨今、精神障害者の働き方が注目され始めています。これまでにも改正を重ねてきた「障害者雇用促進法」は、今年の4月より従業員100人以上の中小企業に対しても、雇用数の2%の障害者雇用を義務化しました。2018年からは、精神障害者も雇用義務対象となり、就職件数の増加が見込まれます。
また、本調査に先立ち、厚生労働省より発表された「平成26年度・障害者の職業紹介状況等」においても、ハローワークを通じた障害者の就職件数は5年連続で伸長しており、なかでも精神障害者の就職件数と就職率が身体障害者を引き続き上回った結果が見られました。
【勤務先や職種について】
所属する企業に対して68%が「満足」と回答、また、自身の仕事内容についても61%が「満足」と答えており、就労している障害者の方は、「現在の職場」についてポジティブな感情をもっていることが分かった。
一方で、雇用形態については正社員雇用が10%強に留まっているのに対して、パート/アルバイト雇用が47%と約半数に上っている。「会社に対して今後求めたいこと」については、「昇給」に次いで「雇用形態の変更」とつづき、「就労条件」については、改善を求めたいという声が多くあがっている。
【生活状況/給与について】
就労中の障害者の方でも大半が、障害者年金、家族からの援助、配偶者の収入といった給与以外の収入を得ながらも、現在の生活状況について「ゆとりがある」と感じている回答は29%に留まっている。さらに、現在の給与額に関する設問についても「満足している」と感じているとの回答が35%に留まっており、就労している障害者の大半は、就労しているにも関わらず、「自立した、ゆとりのある生活を実感できていない」ことが明らかになった。
一方では「今後の給与額の見通し」について、「上がると思う」と回答した方が41%、現状維持も56%と、今後の給与については、ポジティブな見通しをもっていることがみられる。
【求められる配慮・支援について】
アンケート回答者の7割以上が、所属している企業では合理的配慮がなされていると回答した。具体的には、「個々の障害状況や体調にあった業務量に調整してくれている」「上司・同僚が障害内容や必要な配慮を理解している」「業務指示や指導に関して、複数ではなく特定の担当者が決められている」など、企業側の障害者に対する理解が見受けられる。
【調査概要について】
<調査方法>
インターネット・紙面によるアンケート調査
<調査期間>
2015年4月22日(水)~5月8日(金)
<調査対象>
ウイングルを利用し、2012年度~2014年度に企業・団体等に就職した精神障害者保健福祉手帳取得者:307名
【内訳】
・性別 男性:219名、女性:86名 (無回答:2名)
・年代(現年齢) 10代:1名、20代:79名、30代、125名、40代:80名、50代:22名
・1週間の合計勤務時間 20時間未満:20名、20~30時間:87名、30~40時間:128名、40時間以上:72名
【WINGLEについて】
株式会社LITALICOは、2005年12月の設立以来、日本における社会問題としての「障害者雇用」分野に着目し、一法人としては全国最多となる全国44拠点(2015年2月時点)で、障害者のための就労支援事業所「ウイングル」を展開している。就労支援事業所とは、障害者総合支援法において定められた福祉サービス事業のひとつ。一般企業等への就労を目指す障害のある方に対し、就労に必要な知識や能力の向上を図る訓練のほか、履歴書作成や面接など、就職活動対策をおこなう。「ウイングル」では、就職までの支援だけでなく、職場定着支援やキャリアアップまで、一貫したサービスを提供している。
【LITALICOについて】
LITALICOは、2005年12月設立以来、日本における社会問題としての「障害者雇用」分野に着目し、一法人としては全国最多となる全国44拠点(2015年1月時点)で事業所を展開しています。企業向けの障害者雇用支援から始まった事業は、現在では障害者向け職業訓練事業、そして障害者の家族向け事業や教育事業など、その領域を広げています。学習教室「Leaf」を首都圏48箇所(2015年1月時点)で開設しているほか、2014年4月に、IT・ものづくり教室「Qremo」を東京・渋谷にオープンしました。詳細はhttps://litalico.co.jp/をご覧ください。