合理的配慮に関する意識調査サマリー「障害者差別解消法」「合理的配慮」の認知の低さが浮き彫りに
2016年4月施行の障害者差別解消法までに教育現場の対応が急務

「障害のない社会をつくる」のビジョンの下、障害者向け就労支援事業や子どもの可能性を拡げる教育事業を全国展開する株式会社 LITALICO(本社: 東京都目黒区、代表取締役社長:長谷川敦弥)は、厚生労働省が定める「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)を前に、「教育現場での合理的配慮に関する意識調査」を実施いたしました。

今回の調査は、2016年4月に予定される障害者差別解消法の施行を前に、教育現場における現状の意識を調査したものです。同法では教育や就労を含む日常生活・社会生活において、合理的配慮を提供しないことが法律で禁止されます。そこで小中学校のお子様を持つ保護者300名および小中学校の教員300名を対象に、それぞれ同様の設問による調査を行いました。今回の調査を通じて、障害者差別解消法への理解・具体的な事例に対する意識の差をまとめた調査報告の要旨は以下のとおりです。

【要旨】 アンケート結果から
今回の調査により、発達障害の認知・理解は進んでいるものの、「障害者差別解消法」「合理的配慮」に関しての認知は進んでいないことがわかりました。具体的な事例に置き換えて合理的配慮の必要性を尋ねた場合、合理的配慮への理解は高い結果となりましたが「わからない・どちらともいえない」の回答も少なくなく、2016年4月の「障害者差別解消法」の施行に向けて一般への周知・理解促進が欠かせないことが分かりました。
また、合理的配慮の必要性は保護者・教員とも強く感じているものの、学校など教育現場での対応はまだ十分とは言えない状況にあることも分かりました。「わからない・どちらともいえない」の回答も保護者で30%となり、どのような配慮が合理的配慮として認められるのか、具体例も含めたガイドラインの作成など、分かりやすい基準づくりも必要だと考えられます。さらに、発達障害に関しての合理的配慮を必要だと思う保護者は約8割に上るにもかかわらず、Q4-3のような具体的な配慮に対しては、合理的配慮として「理解できない」という回答が2割程度となり、必要な配慮も「特別扱いが過ぎる」と感じられてしまうことも懸念されます。
一般的な「平等」の定義では、「誰に対しても同じ対応をするべき」と解釈されがちではありますが、障害者差別解消法では行政・学校・企業などの事業者は個々の障害に応じて合理的な範囲で個別対応を提供することが必要となります。LITALICOでは就労・教育の領域に関して、具体的な配慮の推進・社会認知の啓蒙を今後進めていきます。

【障害者差別解消法について】
この法律は26の本則の条文と附則から成り、①障害を理由に差別的取扱や権利侵害をしてはいけない、②社会的障壁を取り除くための合理的な配慮をすること、③国は差別や権利侵害を防止するための啓発や知識を拡めるための取り組みを行わなければならないこと、を定めたものです。

【合理的配慮について】
障害のある人とない人の平等な機会を確保するために、障害の状態や性別、年齢などを考慮した変更や調整、サービスを提供することを「合理的配慮」と言い、それをしないと差別となります。ただし、その事業者にとって大きすぎるお金がかかる場合などは合理的配慮を行わなくても差別になりません。
※日本障害フォーラム(JDF)「障害者差別解消法ってなに?」パンフレットから引用

【認知調査】 発達障害の理解は進むが、障害者差別解消法や合理的配慮の内容理解は3割以下にとどまる
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「発達障害」に関しては「内容も含めて知っている」が保護者58%、教員93.7%と認知が進んでいるが、障害者差別解消法に関しての内容理解は保護者6.3%、教員17%、合理的配慮に関しても保護者6.7%、教員24%と3割以下にとどまり、教育現場での合理的配慮の理解が進んでいないことが明らかになりました。保護者に関しては「障害者差別解消法」「合理的配慮」を「知らない」との回答が7割となり、一般家庭レベルでの周知が進んでいない状態です。

【配慮の理解】具体的な配慮に関する理解度は概ね高いが、教育現場での対応は十分に進んでいない
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Q4-1からQ4-5の具体的な項目に関しては、いずれも保護者・教員ともに「合理的配慮として理解できる」の回答がおよそ7割を超えました。しかし、身体的障害に比べると、Q4-1からQ4-3のような発達障害によく見られる症状に対しては、合理的配慮としての理解がやや低い傾向にあることも分かりました。
また、Q5の「学校で合理的配慮が行われている」と回答した保護者は37%、教員は58.3%に留まり、「十分に行われている」という回答は両者ともに10%以下の低い水準となりました。Q6で「発達障害の子どもに対する合理的配慮は必要」と回答した保護者は79%、教員は92.7%おり、実際の対応状況との乖離が見られました。

【調査対象者について】
1.小中学生のお子さんを持つ保護者:300名
【内訳】性別:男性150名、女性150名/年代:20代:46名、30代:74名、40代:60名、50代:83名、60代:37名
2.小中学校の教員:300名
【内訳】性別:男性217名、女性83名/勤め先:小学校:150名、中学校150名
※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100にならない場合があります。

【LITALICOについて】
LITALICOは、2005年12月設立以来、日本における社会問題としての「障害者雇用」分野に着目し、一法人としては全国最多となる全国44拠点(2015年1月時点)で事業所を展開しています。企業向けの障害者雇用支援から始まった事業は、現在では障害者向け職業訓練事業、そして障害者の家族向け事業や教育事業など、その領域を広げています。学習教室「Leaf」を首都圏48箇所(2015年1月時点)で開設しているほか、2014年4月に、IT・ものづくり教室「Qremo」を東京・渋谷にオープンしました。詳細はhttps://litalico.co.jp/ をご覧ください。