就職により自身の「現状」への満足度が向上
~給与や将来性に「不満」「不安」の声多く、雇用の「質」向上が課題に~

障害のある方を対象とする就労支援事業所、子ども一人ひとりの状況に即したオーダーメイドの学習教室を全国展開する株式会社LITALICO(本社:東京都目黒区、代表取締役社長:長谷川敦弥、旧社名:株式会社ウイングル)は、当社が運営する就労支援事業所「ウイングル」のサービス向上の参考とするために、ウイングルを経て企業・団体等に就職された方を対象に、2014年4月に「就職者アンケート」を実施いたしました。今回はその中から、2018年の精神障害者雇用義務化を控え、雇用が増加傾向にある精神障害者の就労後の状況やニーズを把握するため、2012~13年度に就職された「精神障害」のある方に対象を絞り、調査結果をまとめましたので、ご報告いたします。

【調査対象者について】
2012・2013年度にウイングル就労支援事業所を経て企業・団体に就職した方のうち、「主な障害種別」で「精神障害」と回答した313名のアンケート結果を集計しました。

【調査対象者の内訳】
・性別
男性:215名、女性:96名 (未回答:2名)

・年代(現年齢)
10代:1名、20代:66名、30代:109名、40代:111名、50代以上:26名

・雇用形態
正社員:25名、契約社員:88名、パート/アルバイト:177名、派遣社員:4名 (未回答:19名)

・月額給与(手取り)
10万円未満:143名、10~15万円:118名、15~20万円:36名、20万円以上:8名 (未回答:8名)

・1週間の合計勤務時間
20時間未満:24名、20~30時間:107名、30~40時間:133名、40時間以上:42名(未回答:7名)

※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100にならない場合があります。

<就労者の満足度>
自身の現状には「満足」。その一方、将来性に不安の声も

円グラフ1-2

自身の「人生」への満足度について尋ねたところ、いずれも「満足」「よくなった」という前向きな回答が「不満」「悪くなった」よりも多く挙がりました。特に「1年前」との比較では約8割が「(とても/すこし)よくなった」と回答しており、就労が生活の充実感に大きく影響することを示唆する結果となりました。

円グラフ3-4

現在所属している会社や従事している業務についても、いずれも7割弱が「(大変/やや)満足している」と回答しており、所属先や業務とのマッチングの成功が、自身の状況への満足度に繋がっていることがうかがえます。

円グラフ5-6

一方で、給与面を見ると、「満足している」の回答は3割程度に低下し、「不満」が4割を超える結果となりました。さらに、キャリアパスに関する質問に対しては、7割近くが「描けない」と回答しており、現状に対する高い満足度とは裏腹に、将来の生活を考えた際の不安が色濃く存在することが浮き彫りになりました。

<定着支援の重要性>
特に就職直後~6ヶ月までのサポートの重要性が明らかに

円グラフ7

「就職してから最も大変だった時期」では、6割以上が「就職してから3ヶ月以内」と回答しました。「就職後3ヶ月~6ヶ月」を含めると、85%近くに上っており、「まったく新しい環境となる就職先に馴染めるのか」という不安の大きい、就職直後における職場定着サポートの重要性が改めて分かりました。

<就職者のニーズ>
「昇給」「雇用形態の変更」が、職場に求める大きな要素

棒グラフ1

「会社に今後求めたいこと」では、「昇給」が6割近くに達したほか、「雇用形態の変更」も4割近くに上りました。回答者の現在の雇用形態はパート・アルバイトが約6割を占めており、給与の向上と、そのためにもより安定した雇用形態への変更を求める声が多くあることが分かりました。

<アンケート結果から>
今回のアンケートから、障害のある方の自立に向けた就労支援に一定の成果が出ている一方で、就職後の生活の質の向上については、まだ十分と言えない状況にあることが分かりました。就労支援事業所「ウイングル」では、今後、障害者雇用において「職種の幅を広げていくこと」「これまで中心だったパート・アルバイトとしての雇用から正社員・契約社員としての雇用率を上げていくこと」「就職後のキャリアアップも視野に入れた就職活動が出来るようにすること」の3つを課題として、利用者にこれまで以上に満足度の高い就職をしていただけるよう、改善に取り組んでまいります。

LITALICOは、「障害のない社会をつくる」のビジョンの下、社会にある障害をなくしていくことを通して、多様な人が幸せになれる「人」が中心の社会をつくることを目指しています。日本では、障害に基づくあらゆる差別を禁止した国連の「障害者権利条約」を今年の1月に批准しており、労働に関しても、障害者の権利の実現に向けた取り組みが一層強化されることが期待されています。今後も当社では、就労支援事業所「ウイングル」を通じて障害のある方の就職に貢献し、就職者にいきいきと働いてもらい、人の役に立つ喜びをすべての人に届けることを通して、「労働」における障害をなくすことができるよう、支援を続けてまいります。

【精神障害者雇用義務化について】
2013年6月に成立した「改正障害者雇用促進法」において、これまで身体障害者と知的障害者が対象だった一定割合以上の障害者雇用義務の対象に、2018年4月から精神障害者も加わることとなりました。これにより、現在民間企業で2.0%である法定雇用率の更なる引き上げが見込まれています。

【障害福祉サービスについて】
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスは大きく分類すると生活支援・就労支援に分かれます。そのうち就労支援は、就労継続支援A・B型(福祉作業所)と就労移行支援に分かれます。就労移行支援は平成18年の自立支援法改正による新サービスで、一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとされています。また、障害福祉サービスは、自治体の障害福祉課等で発行される福祉サービス受給者証によりサービス利用が可能となり、医師の診断等があれば障害者手帳がなくとも利用できるケースがあります。