・障害者差別解消法について「内容を把握していない」企業が4割超、未だ認知進んでいない状況
・障害者雇用を実施しての感想「良かった」が約9割に上る
「障害のない社会をつくる」というビジョンの下、障害者向け就労支援事業や子どもの可能性を拡げる教育事業を全国展開する株式会社LITALICO(本社:東京都目黒区、代表取締役社長:長谷川敦弥)は、来年4月に施行される「障害者差別解消法」への対応状況や障害者雇用を行っての実感などを調査するために、当社が運営する就労支援事業所「ウイングル」を通して障害者雇用を行った企業やウイングルに実習先を提供いただいている企業等を対象にした障害者雇用に関するアンケート調査を10月に実施しました。今回は、その調査結果をまとめましたのでご報告いたします。
【調査結果の要約】
・来年4月に施行される「障害者差別解消法」について、対応策を「実施している」または「検討している」と回答した企業は合わせて約2割にとどまる
・「内容を把握していない」企業が4割を超え、法施行に関する認知が進んでいない状況が明らかに
・約9割が障害者を雇用して「良かった」と回答。一方、課題として「担当業務の選定」「コミュニケーション」の回答が上位に挙がる
・継続した雇用に向け、「モチベーションを上げる仕組み」が必要との回答が約4割に
調査対象について
障害者雇用を行っている企業400社の雇用部署担当者へメールにてアンケートを依頼、回答いただいた157社のアンケート結果を集計しました。(調査期間:2015年10月13日~10月31日)
※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100 にならない場合があります。
回答者基本情報
・回答者の企業規模
・回答者の所属部署
・所属部署における障害種別ごとの雇用割合(複数回答)
・所属部署で初めて障害者雇用を行った時期
【①「障害者差別解消法」・「合理的配慮」に関する認知・理解について】
Q1. (全企業へ)「障害者差別解消法」について当てはまるものをお選びください
「障害者差別解消法」に関する内容把握や対策状況について質問したところ、「内容を把握している」と回答した企業は計54.8%と半数以上に達しましたが、具体的な対策に関しては「既に実施している」企業が5.7%、「検討している」企業が13.4%と、何らかの対策を実施・検討している企業は全体の2割弱に留まっていることが分かりました。また「名前程度なら聞いたことがある」「知らない」の回答は合わせて44.5%に上り、法施行まで半年を切る状況でも、依然として認知が進んでいない状況も明らかになりました。
Q2. (全企業へ)障害者差別解消法において、合理的配慮の提供義務が定められていることを知っていますか?
Q3. (Q2で「知っている」と回答した73社を対象に)どの障害種別に対する配慮提供が難しいと感じていますか? (複数回答)
「障害者差別解消法」に提供義務が定められる「合理的配慮」の認知状況について尋ねたところ、「知っている」と回答したのは46.5%と半数に満たず、合理的配慮のことを「初めて聞いた」という回答も24.2%に上りました。また、合理的配慮を「知っている」と回答した73社に「配慮提供が難しいと感じる障害種別」を尋ねたところ、「精神障害」の回答が他を大きく引き離して挙がりました。
Q4. (Q1で「内容を把握し、具体的な対策を実施している」または「検討している」と回答した30社を対象に)障害者差別解消法施行にあたり、実施・検討されている対策をお選び下さい(複数回答)
障害者差別解消法に関連して具体的な対策を「実施・検討している」と回答した30社を対象に、実施・検討している対策を尋ねたところ、3分の2を超える21社が「定期的な面談の実施」と回答。次いで「支援機関らと連携した本人に必要な配慮の把握」「従業員に対する障害理解啓発研修の実施」が半数弱の企業で上がりました。
Q5. (全企業に対し、Q4に上げた配慮項目を見ていただいた上で)所属する組織においてどの程度合理的配慮が提供できているか、当てはまるものをお選びください
配慮の具体例を挙げた上で、所属する組織ではどの程度合理的配慮が提供できているか尋ねたところ、「(とても/やや)配慮できている」が62.7%と6割を超えました。「合理的配慮」という言葉からは具体的な配慮内容が想起しにいくい状況にあると考えられ、障害者差別解消法や合理的配慮について、具体的な事例など分かりやすい形での情報提供が求められていることが示唆されました。
【②障害者を雇用しての実感】
Q6.障害のある方を雇用してのご感想をお選びください
Q7.障害のある方を雇用したことで良かったと感じた点を教えてください(複数回答)
障害のある方を雇用しての感想を尋ねたところ、約9割の企業が「(とても/まあまあ)良かった」と回答し、障害者雇用に対する満足度は高い水準にあることが分かりました。「雇用したことで良かったと感じた点」では約3分の2の企業が「社員の障害理解が深まった」を挙げたほか、約2割の企業が「職場の雰囲気が良くなった」と回答。障害のある方を迎え入れることで、職場全体への好影響も生まれていることがうかがえます。また、「本人が期待通りの活躍をしてくれた」の回答が約4割の企業から挙がるほか、「業務が整理された」「業務効率が上がった」といった、業務環境自体に良い影響があったという回答も、それぞれ2割以上の企業から挙がりました。
Q8. 障害のある方を雇用したことで課題と感じた点を教えてください(複数回答)
一方で雇用後に「課題と感じた点」については、半数以上の企業が「担当業務の切り出し/選定」を、ほぼ半数の企業が「職場でのコミュニケーション」を挙げていました。「面談や相談員などの本人へのフォロー/配慮」も4割を超える企業からの回答があり、「仕事の任せ方」や「フォロー体制を含めた本人とのコミュニケーション」に課題を感じる企業が多いことがうかがえます。
Q9. 今後、継続して雇用する上で、新たに必要だと思う点を教えてください(複数回答)
継続した雇用に向けて新たに必要と思う点では、「モチベーションを上げる仕組み」が他を大きく引き離し、約4割の企業が挙げていました。障害のある方の労働に対する満足度を高めていくための仕組みをどのように作っていくかが、雇用継続に向けたポイントであることが分かりました。
【アンケート結果から】
今回は、主に「『障害者差別解消法』や『合理的配慮』ヘの認知や職場における対応状況」と「障害者を雇用しての実感」の2つのテーマについてアンケートを行いました。
「障害者差別解消法」関連では、「内容を把握している」企業は半数を超えた一方、詳しい認識のない企業も4割以上に達しました。さらに具体的な対応について実施・検討できている企業は全体の2割ほどにとどまり、法施行が半年を切った段階で、企業側の対応はあまり進んでいないことが明らかになりました。
一方で、具体的な配慮事項を示した後で、自身の職場の配慮状況を尋ねると、「配慮できている」という回答が多くみられました。またアンケートの中で「『合理的配慮』について感じること」を自由記載形式で回答いただいたところ、「具体的な事例が知りたい」「専門家からの意見が欲しい」「具体的にどこまで配慮すればいいかわからない」といった回答があり、「合理的配慮」という言葉だけでは内容が想像しにくいため、今後対応を検討するにあたり、具体的な事例共有などについてのニーズが高いことがうかがえます。
こうした声も踏まえ、ウイングルでは今後、合理的配慮に関する企業向けのガイドブックの作成・配布を予定しています。国内外の事例を分かりやすくまとめ、対応への一助としていただくほか、「障害者差別解消法」「合理的配慮」に関する企業向けセミナーや勉強会も積極的に開催し、企業の理解促進や啓発につなげていきたいと考えています。1月22日(金)には、東京と名古屋の2ヶ所で、合理的配慮の具体的事例をご紹介するセミナーを開催する予定です。
「障害者を雇用しての実感」に関しては、企業担当者の障害者雇用への満足度が高い一方で、「担当業務の選定」「職場でのコミュニケーション」については課題に感じる企業が多いことが分かりました。また今後の雇用継続に向けて必要なこととして、「モチベーションを上げる仕組み(評価方法/キャリアパス/雇用形態変更など)」の回答が多くの企業から挙がりました。
ウイングルでは障害のある方の就職に向けた支援だけでなく、「職場定着支援」を重視しています。単に職場に長く定着するための支援ではなく、ご本人の人生をより良いものにしていくために、企業に対して適切な評価に対する助言や、働きぶりなどに応じて正社員登用の促しをするなどの働きかけを行っており、今後も、就職後にその職場において長く安心して働き続けることができるよう、企業への働きかけに注力してまいります。
【障害者差別解消法について】
この法律は26 の本則の条文と附則から出来ており、①障害を理由に差別的取扱や権利侵害をしてはいけない。②社会的障壁を取り除くための合理的な配慮をすること。③国は差別や権利侵害を防止するための啓発や知識を拡めるための取り組みを行わななければならないこと、を定めたものです。
【合理的配慮について】
障害のある人とない人の平等な機会を確保するために、障害の状態や性別、年齢などを考慮した変更や調整、サービスを提供することを「合理的配慮」と言い、それをしないと差別となります。ただし、その事業者にとって大きすぎるお金がかかる場合などは合理的配慮を行わなくても差別になりません。
※日本障害フォーラム(JDF)「障害者差別解消法ってなに?」パンフレットから引用
【LITALICOについて】
LITALICOは、2005年12月設立以来、日本における社会問題としての「障害者雇用」分野に着目し、一法人としては全国最多となる全国51拠点(2015年11月時点)で就労移行支援事業所「ウイングル」を展開しています。企業向けの障害者雇用支援から始まった事業は、現在では障害者向け職業訓練事業、そして障害者の家族向け事業や教育事業など、その領域を広げています。幼児教室・学習塾「Leaf」を首都圏54箇所(2015年11月時点)で開校しているほか、2014年4月に、IT×ものづくり教室「Qremo」を東京・渋谷に、2015年3月に神奈川・川崎にオープンしました。詳細はhttps://litalico.co.jp/をご覧ください。